もし、あなたが「今すぐ旅に出なさい」と言われたら?
行き先もわからず、ただ「信じて進め」と。そんなこと、できるでしょうか?
アブラハムは、まさにそれをした人です。彼はユダヤ教・キリスト教・イスラム教の“信仰の父”とされていますが、その人生は波乱万丈。信仰と試練、奇跡と苦悩が交錯する、まさにドラマチックなものです。
ただの昔話と思うかもしれませんが、彼の旅の物語には、私たちの人生や、身体の緊張を解くヒントがたくさん詰まっています。
1. 旅立ち——新しい一歩を踏み出す
アブラハム(当時の名はアブラム)は、古代メソポタミアのウルという都市に住んでいました。
そこは豊かな文明が栄えた場所。しかし、ある日、彼のもとに神(ヤハウェ)が現れ、こう告げます。
「あなたの土地、親族、父の家を離れ、私が示す地へ行け。」(創世記12:1)
突然の指示。保証は何もなし。ただ「行け」と。
普通なら不安でいっぱいになりますよね。
でもアブラハムは、迷わず家族や家畜を引き連れ、旅に出ました。
これは、「新しいことを始める時の心の状態」と似ています。
・転職や独立を決めたとき
・新しい環境に飛び込むとき
・長年の習慣を手放すとき
何かを変えようとするとき、必ず「不安」がついてきます。でも、アブラハムのように「まず一歩を踏み出す」ことで、道が開けていくのかもしれません。
2. 「手放す勇気」——サライとファラオのエピソード
旅の途中、飢饉に見舞われたアブラハム一行はエジプトへ。
そこで問題が起こります。
彼の妻サライは絶世の美女だったため、エジプト王ファラオが彼女を側室に迎えようとしました。
アブラハムは恐れ、サライを「妹」と偽って差し出します。
驚くべきことに、神はサライを守るためにファラオとその家に災厄を下し、結果的にサライは解放されました。
この話、現代の私たちにどう関係があるでしょうか?
それは、「恐れから間違った選択をしてしまうことがある」ということ。
たとえば、
・人に嫌われたくなくて、自分の本音を隠す
・失敗が怖くて、新しいことに挑戦しない
でも、恐れに基づいた決断は、結果的に自分の可能性を狭めてしまいます。
大切なのは、恐れに振り回されず、「本来の自分として行動すること」。
これは、体の緊張とも似ています。
「リラックスしよう!」と力むと、かえってガチガチになってしまう。でも、ふっと意識を手放すと、自然と緊張がほどけることがある。
3. 信じることと、執着を手放すこと
神はアブラハムに約束しました。
「あなたの子孫を空の星のように増やす。」(創世記15:5)
しかし、アブラハムはすでに75歳。
妻のサラも高齢。
「本当に子供なんてできるの?」
そう思うのは当然です。
そこで、サラは焦り、自分の女奴隷ハガルをアブラハムに与えました。
こうして生まれたのが イシュマエル。
でも神の計画は違いました。
99歳になったとき、神はアブラハムに新たな名 「アブラハム(多くの民の父)」 を与え、90歳のサラが イサク を産むことになります。
これこそ、「信じること」の象徴。
私たちは、何かを強く求めすぎると、逆に執着になってしまいます。
たとえば、
・「絶対に成功しなきゃ!」と気負いすぎて動けなくなる
・「もっとリラックスしないと!」と力んでしまう
でも、一度「手放してみる」と、ふっと楽になることがあります。
4. 試練のとき——手放しの極み
物語のクライマックス。
神はアブラハムにこう命じます。
「あなたの愛する一人子イサクを、私への生贄として捧げよ。」
え、せっかく奇跡的に授かったのに!?
信じられない試練ですよね。
でも、アブラハムは従い、イサクを連れてモリヤの地へ向かいます。
そして、刀を振り下ろそうとしたその瞬間——
「待て!」
神の使いが現れ、「アブラハムの信仰は試された」として、代わりに一匹の雄羊を生贄として捧げることになります。
これ、私たちにも通じる話。
「大切にしすぎて手放せないもの」ってありませんか?
・自分のやり方へのこだわり
・昔の成功体験
・もう必要ないのに、手放せない習慣
でも、思い切って手放したとき、新しい可能性が開けることもあります。
5. まとめ——「信じる」と「手放す」
アブラハムの物語には、
✔ 変化を恐れず一歩踏み出すこと
✔ 恐れに流されないこと
✔ 執着を手放すこと
✔ 信じること
そんなメッセージが詰まっています。
もし、あなたが今何かに迷っているなら。
少し力を抜いて、流れに身を任せてみるのもいいかもしれません。
「旅立つ勇気」と「手放す勇気」。
それが、新しい道を開く鍵になるかもしれませんね。